初めて陸に上がった魚の見た空は…?

好きなことを好きなだけ

Sound Scheduleのライブに行ってポルノグラフィティを想った日

私には、解散前から応援したかったなぁ、と思っているバンドがある。
今は再結成したそのバンド、Sound Schedule(サウスケ)にまつわる思い出を書こう。


Sound Schedule - Wikipedia


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【公式】「ピーターパン・シンドローム」/ Sound Schedule(Music Video)



私がサウスケの音楽を聴くようになったのは、ごくごく最近のことだ。
2017年の8月にオーイシマサヨシの『仮歌ツアー』に行って“どったんばったん大騒ぎ”した後、ライブの予定が翌年1月(※ポルノグラフィティ 15th LIVE CIRCUIT “BUTTERFLY EFFECT”東京公演)までなかったものだから、なんか楽しそうなライブないかなー、と思ったのが始まりだった。

仮歌ツアーのチケットを取った時に「大石昌良」がお気に入りワードに登録されたのか、サウスケのツアーの案内がプレイガイドから来ていたのに気づく。東名阪の公演のうち、名阪はSOLD OUT。東京公演残りわずか。
これに行ってみよう、とチケットを1枚買ったあと画面に「予定枚数終了」の文字が現れた。東京公演まで2週間を切っていた。


PLACE2017。


その時知ったのだが、再結成してからのサウスケの活動は年に1度、東名阪ツアーをやるのが基本のようだった。
シングル曲をいくつか知っている程度だったので、せっかく行くのならとアルバムを手に入るだけ全部買った。プライムじゃなくても2日くらいで来たからAmazonはすごい。

アルバムを聴いてみるとめちゃくちゃ好みの音楽だ。なんで今まで聴いてこなかったんだろう。サウスケを通って大人になりたかった。応援していたかった。
そうしてアルバムが届いた日からライブの当日までずっと、日がな1日サウスケの曲を聴いていた。
すべての曲を聴き込むには時間が足りなかったため、過去何年分かのセットリストを調べて頻出のものを重点的に聴いた。
予習しなくちゃ…みたいな義務感もなしに、まるで昔から知っているかのように自然に、サウスケを選んで聴いた。
仕事している時と寝ている時以外はほぼずっと、イヤホンからサウスケが流れていた。



ライブ当日、渋谷クアトロで私は3人の音を浴びながら多幸感に包まれていた。
1年のあいだこの時を待っていた人々の期待と眼差しはあたたかくて、彼らの楽しくてたまらない様子を音の海の中で見守っているようだった。
それはまるでファンだけのイベントのような、秘密の集会のような、とびきり特別な場所のように感じられた。
参加させてもらえてありがたい、なんて幸せな時間だろうと思いながら私はその波間をたゆたっていた。
『君という花』や『コンパス』では合唱に参加し、一体感を味わった。
ライブが進むにつれ、前に立っている女性が涙を拭い出し、ついには手で顔を覆って泣き出した。
私も若干もらい泣きした。


Sound Scheduleはもう解散しません!」と大石さんが言った時、会場はわっと沸いた。
その時、
(そうか、このバンドは1度解散しているんだよな)
と思った。
もちろん知っていたことであるが、改めて事実として反芻した。

ここにいる人達の中の何割かは、解散当時のことを鮮明に覚えているだろう。
彼らは、彼女らは、その時なんて思ったのだろう?
解散が発表された後、何を思ってその時を待ったのだろう?


推しているバンドが解散するって、どんな感じなのだろう。


私はその瞬間に立ち会ったことがない。
万が一、ポルノグラフィティが解散してしまうようなことがあればどうだろう?


最後まで笑顔で見送ることができるだろうか?
今までファンとして応援してきたことに後悔はないだろうか?
私はこれまで彼らの音楽にちゃんと向き合っていただろうか?
「2人になっても活動を続けてくれて嬉しい、応援し続けたい」とファンクラブに入った当初の気持ちを持ち続けてこられただろうか?



—答えはNOかもしれない、と思った。

アルバム『PANORAMA PORNO』あたりがどうもしっくり来なくて、あまり聴き込んでいなかった。ツアーは1度だけ行った。
次の『RHINOCEROS』は好みのアルバムだったが、いつの間にか、以前のようにのめり込むことはなくなっていた。
そろそろ離れ時かもと思っては、せっかくだからとチケットを取ってライブに行って「ああやっぱり楽しい、離れられない」と思い直し…を繰り返し、なかば惰性的にファンをやっていた事実を、この時認めざるを得なかった。


バンドが解散する時なんてたぶん突然だ。
いつかその時が来るとするならば、今のままでは、きっと後悔するだろう。その時になってからでは遅い。そうなってしまったら、悔やんでも悔やみきれないだろう。
急に焦りが生まれた。
50歳で引退しようかと思う、というようなことを昔インタビューで言っていなかったか。
あやふやな記憶が脳内をめぐる。
…時間がないかもしれない。
ポルノの2人ももう40歳をとうに超えた。
いつやめてしまうかわからない。



私は戻ろう。

最後の時が来るまで、出来うる限りの力で応援しつづけるファンに。
戦いつづけるポルノグラフィティに敬意を表し、真摯に向き合う気持ちを持ち続けようと、そう思った。
ステージでは、サウスケ解散前の最終シングル『アンサー』が、少しの哀愁と希望とともに鳴り響いていた。

僕の心のトンネルは 結局 君に繋がっているよ
―『アンサー』



ライブが終わり、私は晴れやかな気分で帰宅した。
公式Twitterに上げられた写真には、端にいた自分は写っていなかったけれど、この場に参加した事実が胸を熱くさせた。


サウスケは、私にポルノとの向き合い方を思い出させてくれた。初心に返るきっかけをくれた。
言葉にすればなんとも陳腐ではあるが、そういうことだ。

それは青春を匂わせる楽曲のせいなのか、昔懐かしい気持ちを思い起こさせる大石さんの歌声のせいなのかは定かでないが、確かにサウスケは私を変えてくれたのだ。



サウスケが、サウスケの曲がこの世に存在する限り、私はこの時の気持ちを忘れないだろう。

そしてその気持ちをしっかり捉えておくために、なによりあのライブハウスじゅうに満ちた幸せを享受するために、年に1度のあの場所へ行くのだ。



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