初めて陸に上がった魚の見た空は…?

好きなことを好きなだけ

カフェイレ 2019年10月7日 まさかの重井港が聖地(湊かなえさんゲスト回①)

ラジオ「ポルノグラフィティ晴一のカフェイン11」レポ】
※多少の抜け漏れがあります。
湊かなえ著『落日』のネタバレを若干含みます。

落日


今日は、ゲストが登場します。僕も、すごく楽しみにしている人です!


さて、今夜のカフェイン11は、「近々来てくれます!」とお伝えしていたあの方!
小説家、湊かなえさんがゲストのプログラムです。
岡野くん以外では、初の同郷ゲスト!同窓生、なんですね湊さん。因島高校の出身で。
先日、出版されたばかりの新刊『落日』の話はもちろん、リスナーの君から届いた質問・メッセージも紹介します。


愛が呼ぶほうへ


晴一「では、本日のゲストをお迎えしましょう!この方です、お願いします!」
湊さん「こんばんは、湊かなえです」
(SE:👐👏👐👏)
晴一「ゲストは、作家の湊さんに来ていただきました!ようやくお越しいただけました、ありがとうございます!」
湊さん「ありがとうございまーす」
晴一「何度かね、ご挨拶はさしてもらってるんですよね」
湊さん「うん。ライブに行かせてもらったり」
晴一「今回のドームもね」
湊さん「はい」
晴一「何年か前から、来ていただけたらいいなとは思っていたんですけれどもこのタイミングで、お越しいただきました!
まずはあれですね、ポルノと湊さんの共通点みたいなとこを話した方が、リスナーの皆さんにはわかりやすいかもしれないですけども!…湊さん、出身は?」
湊さん「因島でーす」
晴一「因島です。我らが因島
湊さん「因島でーす」
晴一「因島。高校は?」
湊さん「因島高校です。略して因高でーす」
晴一「僕と、昭仁とおんなじ高校。で中学は?」
湊さん「因北中です!」
晴一「これ昭仁くんの方の…」
湊さん「一緒でーす」
晴一「僕は土生なんで、まぁ僕らの方がどっちかっつったらこう…」
湊さん「都会?(笑)」
今浪さん「(笑)」
晴一「いや、どっちかっつったら山の手の方ですよね(笑)」
湊さん「ね!今は中心違う…当時はね、土生がシティだったと、思います(笑) ふふふ」
晴一「山の手のね、因北の、あれですけれども…。因高なんですね、因高の2つ上なんですよね?」
湊さん「です!新藤くんのお兄さんとおんなじです」
晴一「そう、さっき話したら同じクラスだったっていう」
湊さん「そうです3年生、おんなじクラスで」
晴一「なんか兄ちゃんと話したことあるんですか?」
湊さん「うん!おんなじクラスだったんで、席も近くになったことあったし。あの、理系クラスだったけど新藤くんのお兄さんよくできたんで、宿題教えてもらったことも、あります」
晴一「え゙?兄ちゃんに?」
湊さん「うん。優しい…」
晴一「兄ちゃん知っとんかな。すごい自慢じゃん」
今浪さん「(笑)」
晴一「兄ちゃんと同じ同級生の人が、ベストセラー作家になって…同級生はなんつってるんですか?」
湊さん「同級生は…色々と出版記念パーティとかしてくれたりしたけど、なんかその前にもうポルノグラフィティが、こんなにねぇ、全国区で人気になってるので、なんか、あんまり…そんな大きな驚きもなく…(笑)」
晴一「(笑)」
湊さん「うちの学年はあの、2個下に続けみたいな、感じですねぇ」
晴一「えっと?最初に…もう、ちゃんと調べてきゃあええのにな。最初に、大ヒットしたのが?」
湊さん「『告白』?」
晴一さん「ですよね。それが?」
湊さん「デビュー作!」
晴一「え、デビュー作っていつなんですか」
湊さん「2008年」
晴一「だからポルノより10年ぐらい遅いんだ」
湊さん「そうです。去年10周年で…ポルノグラフィティは今年20周年なんで、まぁ10年違いという感じで」
晴一「あ、その、俺にとっては手前味噌になるかもしれんけど、ね、因島って田舎からポルノが出て…」
湊さん「うん」
晴一「因島の人がわっしょいわっしょいしたあとに、10年経って、ベストセラー作家が出たけど、自分らの学年から出た!もっと盛り上がっていこうみたいな感じだったってこと?」
湊さん「うん、あのー、まぁ高校っていうよりも中学校がすごい同級生のつながりが強くって。で毎年夏にソフトボール大会とか、ソフトバレー大会があって、それが学年ごとで集まって…で2つ年下の昭仁くんの学年は、アポロ会って名前で…」
晴一「はははは!(笑)」
今浪さん「(笑)」
湊さん「で、うちの学年は、因北っ子っていう…」
晴一「因北っ子」
湊さん「そう。なんかアポロ会に負けるなって感じで…(笑)」
晴一「なるほど」
湊さん「すごい盛り上げてくれました(笑)」
晴一「なるほど。ちなみに?昭仁…昭仁んちもわかるってわけでしょ」
湊さん「徒歩圏内」
晴一「すごいでしょ、因島すごいでしょう!」
湊さん「うん」
晴一「え?東さんはもっと上か、東ちづるさん」
湊さん「うん、もっと上」
晴一「東さん…だから女優、ベストセラー作家、で俺たちでしょ」
湊さん「あと村上ショージさんが、因島高校の、定時(制)を出てらして…」
晴一「その噂はほんとなんですか?」
湊さん「ほんと、ほんと!私が(高校)1年生の時に、『今日はみんなの大先輩にあたる村上ショージさんが学校に遊びに来まーす』って言って、来てくださって。あそこの体育館の前って階段状になってた…」
晴一「わかりますよ、わかりますよ(笑)」
湊さん「体育館の階段の上に座って、生徒たちがわーって取り囲む感じで、村上ショージさんの話も聞いて…」
晴一「へー!こっちに体育教官室があるとこでしょ?階段がこうあって…」
湊さん「あ、そうそうそう。あの坂のとこワーって降りてきて、階段上がって…(笑)」
晴一「はっはっはっ(笑) じゃあ前には大物お笑い芸人もいるっていう…」
湊さん「そうそう」
晴一「ちっちゃい島でちっちゃい学校なのにねぇ」
湊さん「なんかみんなすごい頑張ってるなーっていう」
晴一「ねぇ!いやほんまに皆さん、見て思いますそうやって」
湊さん「いやいやポルノが、ね。デビュー当時も『出身どこですか』『因島です』って言うと『ポルノグラフィティの…』って。ちょっと年配の人は『東ちづるさんの…』っていう感じで」
晴一「う~ん…」
湊さん「すぐ、名前が出るくらい」
晴一「ま、それぐらいいなかったっていうのもあるけどねそりゃあね(笑)」
湊さん「いやいやいやいや」
晴一「今もちなみに時々帰ってるんですか?中学校の友達に会いに?」
湊さん「えーと、今は、実家がまだ中庄にあるんで、盆と正月には帰ってて」
晴一「へー!まだ実家があるんですね」
湊さん「あります、あります」
晴一「へぇ…帰ってんなぁ。結構、有名人っていう言い方がどうかわからんけど、そんなには出てないけど人口フェーズからしたら結構な割合で有名人が正月にいるってことですよね」
今浪さん「ふふふ(笑)」
湊さん「うん、うん」

晴一「ちなみにちょっと、リスナーの皆さんからもメッセージ、湊さんにいただいているんで紹介しつつ…お送りします。
・湊さん、こんばんは。私は『Nのために』という作品が好きなのですが、ドラマでは因島や小豆島などの瀬戸内海の島々がロケ地となっていて、風光明媚な景色が印象的でした。
ドラマで見た景色を自分の目で見たいと思い3年ほど前、ロケ地を訪ねて愛媛県の小豆島に行きました。ゆったりした雰囲気とすてきな景色に癒されました。いつか因島にも行きたいと思います。
湊さんの好きな因島の景色があれば教えてください。

なんかありますか?」
湊さん「えっとですね、あのー、『Nのために』、わりと因島でもロケが行われたけど、小豆島の方が長かったんで、小豆島がなんかあの、聖地みたいな感じになってはいるけれど、すごくいい場面がなんと因島の重井港!」
晴一「重井港!わかるよぉ。金山?もっと、重井港か」
湊さん「いや重井重井!あっちの、三原に行くフェリーが出てるとこ!」
晴一「はいはい。わかりますわかります、重井港ね」
湊さん「あそこで、主人公の希美ちゃんと成瀬くんが、高校卒業して別れるシーンで片っぽの男の子の方がフェリーに乗ってて、女の子がフェリーが見える堤防のとこから走って、お互い頑張れ頑張れーって手を振る…あそこが重井港」
晴一「重井なんだ!」
湊さん「まさかの重井港がもう、聖地っていう(笑)」
晴一「(笑) まさかの重井が聖地(笑)」
湊さん「そう(笑) 部活の試合とか、三原である時はそこから船乗って行ったな~って」
晴一「行った。土生からは超遠いんよ重井港って」
湊さん「うんうん」
晴一「島の逆側みたいになるけえ」
湊さん「うんうん」
晴一「もう、そっか湊さんの作品でもそうだし、まぁ青影トンネルもそれこそ因北だからよくわかるでしょ?」
湊さん「そう~」
晴一「その辺が歌になってたりするからポルノのファンはそこに行くし…」
湊さん「折古の浜とかね~」
晴一「折古の浜ね~」
湊さん「ふふふ(笑)」
晴一「で重井港行ったり、因島のすごいニッチなところに(笑)」
湊さん「そうなの。青影トンネルなんて、狭いし…」
晴一「暗いしね」
湊さん「で車もびゅんびゅん通る…あそこが聖地になってるからみんな写真撮りたがるけど」
晴一「危ないよね」
湊さん「危ない(笑)」
晴一「岡野くんの歌詞なんで、岡野くんに言いましょう。…これ、湊さんの作品ってよう映像になるでしょう」
湊さん「はい」
晴一「そういうのって、自分がこう書くときはもちろんある程度こう、思い浮かべる場所はあるんでしょうけど、」
湊さん「うん」
晴一「映像になったら必ずしもそことは限らないわけでしょ」
湊さん「うんうん」
晴一「そういうののギャップとか…まぁ言うたら自分が思い描いてた登場人物と、役者さんとかの一致とかってあるんですか?」
湊さん「いやもう、『えっ、そっかー』って思うことが多くて、最初の映像が『告白』だったんですけど、主人公が、中島哲也監督は『(松)たか子さん以外考えられない』って」
晴一「うん」
湊さん「でも、私の中の松さんは、ヤマザキ春のパン祭りとか、トレンディドラマとか、すごい明るいはっちゃけたイメージで、『えぇ~あの明るい松さんが、森口先生をやるんだ!いやーどうなるんだろう』って…」
晴一「追いつめていくやつね」
湊さん「そう!ロケ見学に行ったら、『もー怖い怖い怖い怖い、松さんしか考えられない』っていうくらい、上書きされて、もうこの人しか考えられないぞって。
『Nのために』も、あっ窪田くんか、榮倉奈々ちゃんかぁ、ってロケ見学行ったら、『ああ、希美ちゃんと成瀬くんじゃん…』って」

晴一「はははは(笑)」
湊さん「ふふふ(笑) いつも、『あーこの人なのかー』って見たらもうその人以外に考えられなくなるから、監督とかプロデューサーの人ってすごいなぁって」
晴一「あー、それはそっちでね」
湊さん「何歩先まで見えてるんだろうって感じで、いつも感心します」
晴一「なるほどねぇ。役者さんの力量もありますしね」
湊さん「うん、うん」
晴一「なるほど。今回のやつは誰が…もちろん映像化が決まっとるかどうか全然知らんけど、確かに湊さんの作品は映像によく合うから、今回の『落日』も、これやるなら誰だろうとか思いながら…」
湊さん「いや、書くときは絶対に、役者さんの顔は思い浮かべないことにして…なんか思い浮かべてしまうと、その人の代表作の役に引っ張られるから、私がもし松さんをイメージしてなんか書きましょうってったら絶対『告白』なんか書かずに、もっと明るい役とか書いてしまうので、」
晴一「なるほど」
湊さん「あのー、女優さんとか俳優さんはイメージしない、って」
晴一「ふうん。読んでる俺たちはするんですよ」
湊さん「次誰かなーって」
晴一「そうそうそう。誰だろうって、思うけど」
湊さん「答え合わせしてほしいですね。映像化が決まって、役が発表になった時に。『うわー思った通りー』とか」
晴一「今回で言うと、沙良ですよね。沙良が誰かっていう」
湊さん「あー……ちょっと難しい役ですよね」
晴一「難しい役。それではこの後、最新作ですよね、『落日』のお話も聞かせていただこうと思います」
湊さん「はい」
晴一「その前に1曲、『ラック』を聴いてください」


♪ラック


本日のゲスト、湊かなえさんにちょっと質問

母校のホームページ情報によりますと、因島高校は今日から中間テスト前の勉強期間に入ってるそうです。
湊さん「おー」
晴一「よう調べたねこんなん」
湊さん「あはははは(笑)」
来週15日から中間テスト。湊さんは試験勉強していましたか?

湊さん「んー。まぁまぁしていましたね」
晴一「まぁまぁ」
湊さん「まぁまぁ。なんだ、好きな教科はすごい頑張るけど、なんか苦手な教科は本当になんか、その前日にどうにかする…」
晴一「どうにかする」
湊さん「うん。穴のあいたバケツに水入れて、なくならないうちにザーっと出す(笑)」
晴一「ふふふ(笑)」
湊さん「うふふふ(笑)」
晴一「これ、学生時代はそうやって物語を書くのが好きだったり、なんかそういう子だったんですか」
湊さん「いや、全然、部活も剣道部だったし、書いたりとかはしてなかったけど、本読むのは好きでした」
晴一「例えば?」
湊さん「高校の時はなんかカッコつけたかったんで、アガサ・クリスティをずーっと」
晴一「あぁ、そっちね」
湊さん「うん」
晴一「洋物ね」
湊さん「うん、あのー、数学の塾に行っていて、それが田熊のたなか書店の2階にあって…(笑)」
晴一「はいはいはい! え、田熊の何書店だっけ?せとうち書房じゃなく?」
湊さん「いや、たなか書店だったと思うんやけど…で、そこの2階が数学の塾でー」
晴一「そうよ。何塾っつったかなー、俺も行ったんやないかな」
湊さん「で、前の学年の人とかがやってる間とかって、下の本屋さんで待ってて、で立ち読みしたりしてて、その時ちょっとカッコつけたいお年頃だから、アガサ・クリスティの棚の前で物色したりとか」
晴一「だから、あれでしょ?高校からでしょ」
湊さん「うん」
晴一「で山があって…」
湊さん「うん。そうそう越えていく、越えていく!」
晴一「僕んちわかります?」
湊さん「病院の前?」
晴一「いやいやそれ、それね、おばちゃんとこ」
湊さん「お、お店。あーそうなんや」
晴一「おばちゃんとこ」
今浪さん「いひひひひ(笑)」
晴一「山越えて、田熊に行くでしょ。田熊に行って山…グラウンドがここにあって」
湊さん「あ、そうそう。山越えて、お墓の横をこう通って…」
晴一「そう、うち墓の横なんで」
湊さん「あーそうなんや!あー!」
晴一「ぐーっと行って海があるでしょこうやって」
湊さん「うんうん」
晴一「でこの辺のやつでしょ?」
湊さん「そうそうそうそう!」
晴一「僕もまさにそこです、本屋と言えば」
湊さん「ね!」
晴一「たなか書店って言ってたかな」
湊さん「どうかな(笑) ちょっと、名前は怪しいんですけど、まさにそこ!まさにその山越えて…ああっわかった!新藤くんちもわかったー」
晴一「でしょ。で、ここの本屋で僕も買ってたし、2階の数学教室でしょ」
湊さん「うんうん」
晴一「数学塾にも行ってましたよ僕」
湊さん「うんうん。あのひょろっとした感じの先生で…」
晴一「そう。怖い、ちょっと」
湊さん「ちょっと怖い…(笑)」
晴一「へー、このたなか書店(仮)で」
湊さん「ほんとにカッコ仮…(笑)」
晴一「本を買い…あ、一緒だ」
湊さん「うん」
晴一「なんだ俺もベストセラー作家になれたかもしれんのに…なれんか!書けないか!」
今浪さん「ふっふっふっふっ(笑)」

晴一「で、本を読むのが好きだった?」
湊さん「うん、好きだったんで、そこでいっつも本買って…」
晴一「で文章書くようになったのはいつなんですか」
湊さん「文章書くようになったのはほんとになんか30歳過ぎて、なんか書いてみようかなぁと思って」
晴一「えっ、突然?」
湊さん「うん、突然なんか新しいことがしたくなって。わりと結婚して子どもが生まれて家も建てて、あー落ち着いたなーって思って、もう1つくらいなんか新しいこと始められるかなーって。
じゃあ、すぐ始めたいのであんまり…私淡路島に住んでいて、文化教室とかもないし…あーじゃあパソコン持ってるし、あんまり有効活用できてないから、これでなんか書いてみようかなぁと思って、書いたのがきっかけです」

晴一「はぁ、そのくだり聞いたことあるけどほんとなんですね」
湊さん「うん、ほんとですほんとです」
晴一「ほんとにあの、村上春樹で言うと、『ある日曜日のデイゲームに、ヤクルト戦を外野で見てたらなんか文章書こうと思った』みたいな、カッコいいきっかけが、なんかようわからんけどあったんじゃけど、そうじゃなくほんとにもう、パソコンがあったけえ…」
湊さん「そうそう!VAIOを27万で買った割には、ぜんぜん有効活用できてないから、なんか色々投稿して27万円分、なんか賞金を稼ごうと思って…」
晴一「元取ったなぁ~!そのVAIO!」
今浪さん「あははは(笑)」
晴一「で、でも最初が『告白』じゃないんでしょ?」
湊さん「うん。最初はTVの脚本のコンテストに応募して、そしたら3作目くらいで佳作になって、でTV局まで授賞式に行って、おー脚本家になれるぞと思ったら、プロデューサーの方に、『やっぱ地方に住んでると脚本家になるのは難しいですね』って言われて。直しとかがあったときにすぐ来れる人じゃないと…特に新人だったら困るんでって。
でなんか悔しいな~と思って、地方に住んでいて、書くことで成功したいなと思って、それから小説を書くように、なりました」

晴一「でも最初27万の、元を取りたいなと思った感じの、入り方だったんだ」
湊さん「うんうん」
晴一「へぇー。すごいね、それがもう2000年の半ばくらいってこと?」
湊さん「えーと、2004年の秋に書き始めて、TV局の賞を取ったのが2005年の春で、そこから小説を書いて、2007年の春に小説推理新人賞っていう短編の賞で、『告白』の第1章の部分で受賞して、そこから1冊の本にするために連作にして、2008年にデビューです」
晴一「へぁー…これって、すげえ興味あるんだけど、こういうのって2007年に新人賞取った時に、編集の人からもっとこうした方がいいってアドバイスがいっぱいあったりしてもっと直したりするのか、最初から自分文章でいけたとかそういう…
僕で言うと、デビューするまでにいろんなこう指導が入って…」
湊さん「あー」
晴一「ポルノはこうやって軌道を作って、自分もそんなかで必要なスキルを見身につけて、デビューしたっていう感じなんですけど」
湊さん「んー」
晴一「このVAIOで打ってた時と、新人賞取ってその後デビューするまでの…なんていうのかな、スキルっていうのは自分のまま行ったのか、周りの人のアドバイスも受けてきたのか」
湊さん「なんかスキルっていうか、作風っていうか、VAIOで打ってた時は何の制約とかもないから、自分がどんどんこう、突き詰めたいことをワーって書いていってて、気がついたら鼻血が出てたよぉってくらい、」
晴一「(笑) どういうこと?」
湊さん「追いつめて書いてて、でそれが新人賞取るとみんなもなんとなくちらほらするし、ネットとか検索したら感想とか書いてあったりして…
あんまり明るい話じゃないから、書いてる人も怖い人なんじゃないかとか、ちょっとあの、大丈夫かみたいなコメントとか読んだりすると、やっぱりいい人と思われたいから、1冊にするにあたって、だんだんいい話に向かって行って…(笑)」

晴一「なるほど(笑)、それは自分が勝手にね(笑)」
湊さん「和解するような話にしたら、担当の編集者の人が、『この3章は全部ボツです』と」
晴一「へぁー」
湊さん「『今、世の中はこういういい話が求められているかもしれないけれど、こういういい話を書く人はたくさんいるので、今からはもういりません』って」
晴一「んー」
湊さん「『それよりは、あなたしか書けない話を最後まで突き詰めてください』って言われて、あーそっか、いいんだそんな、なんかいい話にしなくってもって思って、なんかそこからはもうガーっと突き進んで、はい」
晴一「じゃその編集の人との出会いはひとつの大きなものだったってことですか」
湊さん「うん。もし違う人だったら『告白』も第3章ぐらいから和解して、なんだかハッピーエンドのほんわかした話で終わってた、かもしれない」
晴一「あー、なるほどね。そのさっきの話っていうのは、そのVAIOに向かってた時から自分で集中して、自分を吐き出すみたいなつもりで書いてたってこと?」
湊さん「なんかあの、こう憑依する感じでずーっと、あの松さんがやってた森口先生になりきってずっと独白をしてたんで、なんか鼻水出てきた…と思ってティッシュで拭いたら鼻血で、なんかキーボードにも落ちてるし怖い怖い怖いと思って。思い詰めすぎたー、抜け抜け抜けーって」
晴一「あ、でもそれくらい、ほんとに集中して書いてるってことかぁ…」
湊さん「そーですね書いてたらやっぱり、そうなるし、他の作品とかでも、書いてない時は自分から抜かないとしんどいなぁと思うけど、やっぱり書き終わるまでは自分の中に残ってて…
主婦なんで、夕方買い物とか行ったりして知り合いに会うと、『今怖い話書いてるよね?すごい顔が怖いよ』って(言われて)、あー抜けてなかった~って…」

晴一「で今回の…『落日』の話もせんといけんから…『落日』みたいに、独白って言い方なのかな?いろんな人が、話すみたいな…なら章ごとに、その人になっていく?」
湊さん「うん。あのー、主に脚本家の千尋と、映画監督の香が、交代交代になるんで、千尋を書いてる時はやっぱり自分がどんなにダメなところがあっても自分はやっぱりかわいいと思うから、どこか自分をフォローしたり言い訳したりするような語り口になるけど、もう今度、香の視点に行ったら香になるので、千尋には情をかけないとか」
晴一「ん~」
湊さん「もう切り捨てて、その人に入りきるっていう感じで書きますねぇ」
晴一「それは、こうやって…どうやった方法論するのかわからないけど、先生が」
湊さん「うんうん」
晴一「ひとりひとりに、結構詳しい背景を作るんですか、最初」
湊さん「うん、もう登場人物の…今回の作品では一代記って言ってるけど、私は普段は履歴書って言ってて…紙には書かないけど、書いたら紙に書いたことだけになってしまうので…頭の中で、その人の家族構成から、生年月日から、こんな性格でとか兄弟いるのかとか、たとえ兄弟が出てこなくても兄弟いるのかとか、どんな性格かなとか、得意な教科は何かなとか、勉強好きかな、スポーツ得意かなっていうところを作っていきます」
晴一「もう頭の中でちゃんと…」
湊さん「そうですそうです、主人公だけじゃなくって全登場人物作って、であの、頭の中で映像というか、ジオラマみたいな景色があって、それぞれに登場人物を置いていくと、動き出してくれるので、じゃあ今どこにカメラがあるかなって。千尋の目から見えているものは何で、この向き合ってる人について千尋はどれだけ知ってるかなとか、どういう関係かなと」
晴一「面白れぇ…!だから湊さんの頭の中にあるから、その章で湊さんがそっち側に乗り移るんがちょっとわからんけど、その時点では結構、破たんのない人物に皆さんはなってるってことですよね、キャラクターに」
湊さん「そう、ですね。うんうん。で、なんか『ここの場面って、こういう決め台詞とか言った方がカッコいいな』と思うけど、」
晴一「言いたい言いたい、言いたい」
湊さん「でもこの人はここでは言わないなと思ったら、書きたくっても我慢する」
晴一「うわぁ言いたい時ありますよねー。確かに、キャラクターが『この人こんなこと言わんよな』って」
湊さん「あとこんなカッコいい言い回ししない、とか」
晴一「あー。なるほど面白れえなぁ。その設定を考えるまでに結構時間はかかるんですか」
湊さん「うん。あのー。作らないと動かないんで、」
晴一「あー逆にね、ジオラマが」
湊さん「作らないまま動かし始めると、あとで『この人こんなこと言わないよね』って、あとでなんかこう、ズレているのがわかるので、最初作っとかないと、だんだんずれてくるので…」
晴一「あれは?また、小説の書き方でもあるけど、エンディングを決める人も決めない人もいるって言うじゃないですか。湊さんはもう、決まってる?」
湊さん「一応決めて…スタートとゴールを決めて、そこに行くにはどうなるかなって決めて…私山登りが好きなんですけど、その頂上に行くまでに自分がどんだけルートを作れるかなっていうのが、小説の面白さかなぁって思って。すごい簡単なルートもあるけど、できるだけ難しいルートで…でも難しすぎたらみんな途中で飽きてしまうので」
晴一「どこ通ってきたっけー?」
湊さん「ところどころ達成感、見晴台とかもあるような…。で頂上着いたときにこのルートが一番いい景色が見えるだろうなぁっていう感じで書いてます」
晴一「今回の『落日』も、確かにいろんなルートから行って最後にここにたどり着いて、いい景色…いい景色っつうか、ここを見たかったんだっていうようなんが…」
湊さん「そうです、そうです」

晴一「ちなみにちょっと『落日』の…どこまで僕が紹介していいのか…えっと?9月の?」
湊さん「4日ですね」
晴一「もう読まれた方もいるから…どこまで(台本)読みゃええんかな~…俺は読んだから全部わかるんじゃけど」
湊さん「でもここに書いてるのはもう、全部…」
晴一「じゃあザーッと読んでいきましょうか。
若手脚本家の甲斐千尋のところに突然、映画監督の長谷部香から、連絡が届くことから動き出す物語。
売れっ子映画監督がなぜ若手の私に連絡を?と不思議に思う千尋。連絡を取り合い、出会った席で香から持ち出された話は、次回作で笹塚町一家殺人事件を取り上げたい、その話を聞かせてほしいというもの。この事件は15年以上前に起きた殺人・放火と重なった悲劇。笹塚町とは東京の笹塚ではなく架空の、人口1万5千人ほどの小さな田舎町で起きた、ということで」
湊さん「そうなんです。こないだ京王線乗って、おお~笹塚~あっははははは(笑)」
晴一「ディープな街です笹塚って」
湊さん「あはははは(笑) なぜ知らなかった?って(笑) まいっかー」
晴一「渋谷からちょっと甲州街道行ったところですねあれ」
今浪さん「そうですねぇ」
晴一「それとは違うのね。笹塚町…はい。監督・香…この監督がね、最近でっかい賞をもらって」
湊さん「そうです、海外の」
晴一「新進気鋭の、今をときめく香っていう監督から、まだ下っ端の脚本家にもなれていない千尋のところに連絡が来るってところから始まるんですけど、なぜ香が千尋にわざわざ連絡を取ってきたのか?その話を聞いて思ったこと感じたこと、そして日々のことを千尋は姉に打ち明けたからストーリーは進んでいくんですよね。姉もとっても重要なキーパーソンなんですけれども。
監督・香の視点、脚本家・千尋の視点のストーリーが交互に展開しながら千尋の幼少期、学生時代の記憶や傷への受け止め方が、明らかになっていく事実によって、どのような模様を描くのか?という感じですね」
湊さん「はい」
晴一「ちゃんとまとめられていますか?これ」
湊さん「はいもうバッチリです。あーもう読みたーいって」
晴一「あはは(笑) うちの、駆け出しの脚本家が…脚本家っつったらアレか」
今浪さん「構成作家です(笑)」
晴一「まぁまぁベテランじゃしね(笑)」
湊さん「ありがとうございます」
晴一「はい。僕もね、言いたいこといっぱいあるんですけど、これ系をね、下手なこと言っちゃって今から読む人の興を削ぐようなことしちゃね…」
湊さん「あー、ねぇ」
晴一「絶対いけんけど、僕はこの沙良っていう登場人物が一体どんな人だったか…きっと、それこそ『落日』の中で描かれてる沙良以上の沙良があるわけでしょ?きっと湊さんの頭ん中にも」
湊さん「そうですね」
晴一「実際沙良の人生にも…なんか沙良に興味があるよねぇやっぱねぇ」
湊さん「ずっと、作品を読んでくれてる方が、沙良は私の作品史上、最悪って」
晴一「最悪?」
湊さん「最悪の」
晴一「そうか、こんなに悪意を持って悪な人って…言ってもいいのかな大丈夫かな」
湊さん「いや大丈夫…そもそもが沙良、殺されてるし…」
晴一「そうか。最初の時点では殺されとるんじゃ」
湊さん「でも絶対、沙良みたいな人は誰の周りにもいると思うんです」
晴一「うん。あんなにその、しでかしたことの結果が最悪にならなかったとしても、その種みたいなの持ってる人は、いるかも」
湊さん「なんか、関わってしまったことが、運が悪かったっていうか、避けられない感じの人はいるんじゃないかなぁと思います」
晴一「面白いね、湊さんと喋ってるとこの沙良自体が、先生が生み出して創ったっていう感じで喋るんじゃないくて、なんか自分もこの沙良と出会ったって感じの…」
湊さん「あ、うんうん」
晴一「知ってるって感じの喋り方だから、もうちょっとナチュラルに、生まれてきたもんなんでしょうね」
湊さん「なんか私の中にはそれぞれの人物がいるので、みんな知り合いというか…」
晴一「あー…創ったんだという感じではなくて」
湊さん「うん」
晴一「なるほど。ぜひ、手に取っていただきたい。ほんとに、書店探さなくてもだいたい目に付くとこに湊かなえあるんで(笑)」
湊さん「うん。赤い、赤い」
晴一「そんなに探す必要もなく…あの、ポルノのCD探す時はEXILEの後ろとか見んといけんかもしれんけど、」
湊さん「いやいやいや…」
晴一「湊さんのやつはだいたいあるんでね」
湊さん「これは言っとかなきゃ。沙良は、作品史上、一番悪女かもしれないけど、この『落日』って作品は、怖い終わり方ではないです。わかりやすく言うと、嫌な気分にはならない」
晴一「ならない。ほんとにこう、この人物たちの人生を受け止めて、本を閉じるって終わり方」
湊さん「あーいいですねぇ、“受け止めて”」
晴一「ぜひ、手に取ってみてはいかがでしょうか?」


♪キング&クイーン


晴一「今日は小説家・湊かなえさんをゲストをお送りしてきましたが…ここで大きなお知らせ!
僕がもっとお話しを聞きたいってことお伝えすると、なんと来週もお付き合いいただけるそうで!よろしくお願いします!」
湊さん「よろしくお願いしまーす」
晴一「来週は、もっと…今回は作品の話も聞かせていただきましたけど、湊かなえさんのパーソナルな部分、ストレス発散とか今の趣味とか!カープは好きなのかとか!カープで言うと誰が好きなのかとか!」
今浪さん「はっはっはっ(笑)」
晴一「カープのピッチャーで言うと誰が好きなのかとか!色々話せたらなと…思っております!」
湊さん「話せるかなぁ…(笑)」
晴一「はい(笑)、では今日の締めに湊さんから…湊さんライブも、さっきも言いましたけど何度か来ていただいて…印象に残ってる曲とかあったら是非、リクエストお願いします!」
湊さん「えっと、今回の『落日』にも繋がるところがあるかなということで、『LiAR』をお願いします」
晴一「あーいいですねぇ、じゃあポルノグラフィティで『LiAR』を聴いてください!」


♪LiAR


エンディング

・12月25日 20th Anniversary Special Live Box発売
・出張ポルノ展 広島と大阪で開催
・10月13日 幕張メッセ×bayFM 30th anniversary special Thanks party
広島テレビ『テレビ派』にて「ハルイチノオト」担当中


では、今夜はこの辺で!
今日は湊かなえさんをお迎えしてお送りしたんですけども…
俺が湊さんに、どう書くのかとか興味津々なのはわかっていただいたと思うけど、俺が一言も本出したなんて言うてないじゃん。
今浪さん「そうですね今週ねぇ」
これをね、もし言ってしまうと俺の作家としてのこの、階層と…
今浪さん「あっはっはっは!(笑)」
作家界のヒエラルキーが違いすぎて(笑)、たぶんラジオで話せなくなるから。
今浪さん「なるほど(笑)」
あくまで、「お兄ちゃんの同級生のもの書く人」とか、「ポルノと作家の方」っていうね、この構図を変えたらね…
いうぐらいね、あれやからね。やっぱほんまに、ベストセラー作家ですからね。話も面白かったですね。
また来週、何が聞けるのか楽しみです。


スタジオに入ってきた瞬間、うちの兄ちゃんの嫁はんの話ししよったけえね。
今浪さん「はっはっはっ(笑)」
嫁はんも同じクラスなんだよ、湊さんと。



ディレクター谷脇さんの放送後記

10月07日の放送

ついに念願かなって
湊かなえさんに
ゲストに来て頂きました。

ベストセラー作家であり、
晴一と昭仁の
高校の先輩!

今となっては、
凄いことですけど、
当時は、まさかまさか
でしょうからね。

来週も、さらに
深堀をしていきます。

お楽しみに!

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