初めて陸に上がった魚の見た空は…?

好きなことを好きなだけ

カフェイレ 2019年10月14日 故郷から出たら、いいところに気づく(湊かなえさんゲスト回②)

【ラジオ「ポルノグラフィティ晴一のカフェイン11」レポ】
※多少抜け漏れあります。

別冊カドカワ 総力特集 ポルノグラフィティ    62484‐25 (カドカワムック 421)


今週も、先週に引き続いてゲストが登場です。


このオンエアが流れてる頃には、ラグビーワールドカップ日本大会予選プールの試合がすべて終了。果たして史上初の予選プール突破となっているのか。
あの、ほんとに疑問…素朴な疑問言っていいですか。
これ、今日本でこんなラグビーが盛り上がってるのは、日本でワールドカップをやってるからってことなんですか。
今浪さん「あと、4年前の大会で、強豪と言われた南アフリカに、五郎丸選手の時に勝ったから」
奇跡の大金星…
今浪さん「あそこからやっぱきてますね」
ラグビー自体が盛り上がってる?
今浪さん「はい」
あーなるほどね。もうすごいTVでやりよるし、街中見てもすごいラグビーのユニフォーム…ピンク?赤?
今浪さん「縞々のボーダー」
縞々のやつ。よう見るもんね。日本もラグビーが浸透してきたんですね。

さて、今夜のゲスト、本日も小説家・湊かなえさん。先週に続いて登場のプログラムです。
湊さんはラグビー見ているんでしょうか。


♪Mugen


晴一「では!本日も先週に引き続き、この方にゲストに来ていただいてます!よろしくお願いします!」
湊さん「よろしくお願いします、湊かなえでーす」
(SE:👐👏👐👏)
晴一「湊かなえさんに来ていただいてますけども…湊さんは、ラグビーワールドカップ日本大会は観ていますか?」
湊さん「時々、観ています。私あの、青年海外協力隊に、作家になる前行っていて、それでトンガに2年間住んでたので」
晴一「2年間も?」
湊さん「そうです。でトンガってラグビー盛んなんで…今回も出てるじゃないですか。だからちょっとトンガ応援したいなぁと思って観てるんですけど、なんかイングランドにボロ負けしちゃって残念だったな~とか、そんな感じで観てます」
晴一「…何を掘っていけばいいのかわからん」
湊さん「ふふ(笑)」
晴一「トンガに2年間…トンガって…待って、どこにあるか考えるよぉ。こっちだ。え?トンガってどこにあるんですか」
湊さん「えーっと、太平洋があって、赤道があって、日付変更線がまっすぐ下りてクキックキッってなんか途中で出っ張ってるところが、あるじゃないですか。その出っ張った、とんがったところです」
晴一「とんがったけトンガなのかなぁー…」
湊さん「(笑)」
晴一「それオーストラリアの方?」
湊さん「あ、そうそう!オーストラリアから、飛行機で2~3時間で。ニュージーランドだったら、1時間~1時間半ぐらいの距離です」
晴一「ほぉー。それトンガ語なんですか。英語?」
湊さん「英語…がえっと、学校とかでは使われるけど、日常会話はトンガ語」
晴一「そこで何してたんですか…訊きたいこといっぱいあるんですけどややこしいなもう(笑)」
今浪さん「(笑)」
湊さん「えっとぉ(笑)、学校の、高校の家庭科の先生をそこではやっていて…なんかトンガ太った人が多いから、生活習慣病とかにもよく罹っていて、それで栄養指導しましょうって言って家庭科の授業をしていた…」
晴一「家庭科の先生もできる?」
湊さん「そうです、そうです。作家になる前は、日本でも高校で家庭科の講師をしてたんで」
晴一「へー!そこもまた掘って行かんと…。それは大学とかで、調理とか、なんか縫いもんとか…」
湊さん「あっそうそう。縫い物をやっていて、教員免許を取って、普通にアパレルメーカーに就職したけど、あの、青年海外協力隊を、トンガに行きたかったから受けて。
で帰ってきて今度、トンガでやってたからっていうことで高校で家庭科の講師をし始めたのがちょうど1999年で、ポルノグラフィティデビューの年で、なんかもう、『先生知っとんねん、同郷やねん』ってすごいむっちゃ自慢して(笑)」

晴一「ふふふ(笑)」
今浪さん「(笑)」
晴一「『因島やき』って(笑)『兄ちゃん知っとるんや』って(笑)」
湊さん「『おんなじクラスやってんお兄さんと』って(笑)」
晴一「(笑) なるほど、色々、人に歴史ありですね。
先月、最新刊『落日』が出版されたばかりの湊さんと、先週はその『落日』のこと…まぁ結果俺が湊さんに訊きたい事ばーばー訊いとったばあじゃけど…ですけども今回は、ラジオらしく!広く!談義をしていきたいなと思います」
湊さん「はい」
晴一「あのー、湊さんに質問その他ありますかって、リスナーの皆さんにたくさんメッセージをいただきまして、ぜひお答えいただけたらなと、思います!」

湊かなえさんがカフェイン11に登場。ついに!この企画が実現する日が来たかという感じですね。湊かなえさんに質問です。湊さんが日常でテンションが上がる時っていうのはどんな時でしょうか。やっぱり、すごく練られた小説の設定にたどり着いた時とかなのでしょうか。それとも私のように、遅刻した!と思ったら電車が遅延していて助かったみたいな、とっても普通なことだったりするんでしょうか。馬鹿な質問ですいません。
でも湊さんの日常はベールに隠されていて、なかなか知れないので、これを機会に訊いてみたいと思ったんです。

晴一「どんな時に、テンション上がりますか」
湊さん「えーと…くじに当たった時とか?」
晴一「くじに当たった…そりゃ上がるなぁ!」
今浪さん「(笑)」
湊さん「わりと(笑)、わりとそういう感覚っていうか、なんか今来てるぞ!ってのがわかる時とかに、ほんとにアイスクリームとか…あっ、最近だとカプリコ!」
晴一「カプリコ!?」
湊さん「カプリコって、当たりに…何本か?何百本かにひとつ…あの、ピンクのアイスクリーム型のカプリコに、顔が描いてあるんですよ。チョコレートで。あれが出た時のあの…!」
晴一「…カプリコ?」
湊さん「カプリコ!」
晴一「ジャイアントコーンじゃなくてカプリコの方?」
湊さん「カプリコに顔が描いてある…ちょうどめくったら、おっ!このチョコレート…うわー顔付き顔付き、って」
晴一「わかるような…最近カプリコも見てないな~!あのピンクのやつですよね?」
湊さん「そうそうそうあのピンクのところにチョコレートでね、茶色くね、目ぇとくちばしみたいんが描いてある…」
晴一「へー!」
湊さん「顔付きカプリコがあるんですよ!」
晴一「それ当たり?」
湊さん「当たり!」
晴一「もう1個もらえんの?」
湊さん「いや何にもないけど」
晴一「なんじゃ(笑)」
湊さん「出たことが嬉しい!」
晴一「なるほど。すげーレアな情報だなぁ。確かにそれは嬉しそう」
湊さん「うん」
晴一「カプリコが好き…?」
湊さん「いや、あのー、すごいたまに、昔食べてたチョコフレークとか、そういうなんかいいチョコレートじゃなくって、昔、あー好きだったなぁとか、買ってもらいたかったなーっていうお菓子を買いたくなることがあって…
なのでカプリコも、『すごいいっぱい大人買いして何本かに1本』じゃなくて、そういやカプリコって久しぶりに食べてみたいなぁって思ってそれで1個買って開けたら、お~顔付きじゃ~ん!何これ~!って調べたら、当たり。レアなカプリコ。もうアガるアガる」

晴一「同郷の湊さんの前じゃけ僕もその話いいですか?昔ね、あのー…ブロイラーってわかります?」
湊さん「あのう(笑)、鳥の…」
晴一「パックになってて…」
湊さん「あの、照り焼きみたいな…」
晴一「そうそうそうそう!それが原山…あの、因高の前の、駄菓子屋の原山に、売ってて」
湊さん「うんうん」
晴一「それ肉じゃけ、肉。手羽先が真空パックに入ってて。で、部活で腹減ってるから、それが50円で超美味くて」
湊さん「うんうんうんうん、私も買ったことがあります」
晴一「ありますか?で、それ大人になったら絶対それ買おうって、腹いっぱいブロイラー食ってやろうって。ブロイラーっていう商品名だったんよ」
湊さん「そう、そうそう」
晴一「なら最近、あれね、1本になって、100円になってるんです」
湊さん「えっ高い…」
晴一「でしょ?」
湊さん「うん」
晴一「この再会した俺の思い出の彼女が、こんなに高嶺の花になってるとは思わずに、大人買いするのもためらうような…」
湊さん「しかもあのままで?なんかもっと高級になったとか…」
晴一「ただ1個になっただけ。パッケージも全部一緒で100円になってるっていう。お高くとまりがやって…」
湊さん「お高くとまりやがって…(笑)」

晴一「はい、もう1個ぐらい行こうかな?あー僕これも訊きたいなぁ。あー…ちょっとサクサクっと訊いていこうかな」
湊さん「じゃあ短く、答えていきます」
晴一「・小説や映画を見ています。原作に力があるので映画でも面白いですと!」
湊さん「ありがとうございます」
晴一「という話をしながら、
ちなみに、湊さんは人の心を抉るような奥の部分までを書かれていますが、何時ごろ、どんな環境で書かれているのか1日どれぐらい書き進めているのかなど、その書くスタイルについても気になります、教えてください!っていう」
湊さん「書くのはいつも夜で、夜のだいたい10時から…えっと、デビュー当時は4時まで頑張れてたけど、今は2時3時ぐらいまで書いていて。でもう音のない…音楽とかも聴きながらは絶対書かずに、音のないシーンとした中で、書いてます」
晴一「自宅?」
湊さん「自宅です」
晴一「自室?」
湊さん「自室。仕事部屋用にひとつ、はい」
晴一「ほーん…あの、人によってはね、彼みたいに…えーっと、伊坂幸太郎くん。カフェで書くとか」
湊さん「あー、うんうん」
晴一「スタバを全部回るとか」
湊さん「うんうん」
晴一「なんか海外で、書く人とか」
湊さん「うん」
晴一「もう、自分のスペースでしんとした状況で書く?」
湊さん「ま、子どももいるんで、もうだいたい家が拠点で、で夜中に書いて…で夜中書くと、だいたいラブレターも思いつめたようになって、小説もぐーっと奥まで入り込むのはいいんですけど、入り込みすぎてもう読む人が読んだらちょっとしらけちゃうよっていうようになってしまうので…日中、毎日通ってるコーヒー屋さんがあって、そこで原稿で読み返したりとかはします」
晴一「そのバランスなんだ。昼の自分と、夜の自分のこの、原稿の入り込み方を…」
湊さん「そうですそうです。なんか、『入り込みすぎ入り込みすぎ、このナルシストが』って思いながら(笑)」
晴一「(笑)」
湊さん「直したり、このまま行こうとか、明るいところで絶対に読み返すようにしています」
晴一「でも、最初作るのは夜の方がやっぱり…」
湊さん「夜です」
晴一「んー。昼間は、新たなものは、まぁエッセイとかは書かれるかもしれないけど、小説の新たな章は昼間は書き始めない?」
湊さん「いやーもう締切間際になったらそうは言ってられなくって、もう本当に、今が何時だかわかんないけどとにかく出さなきゃ、書かなきゃっていう感じで書くけど、普段は夜中に書いてます」
晴一「あー、面白いなぁ。また村上春樹さんの話になるけど、村上春樹さんは自分が走ってからその後に…あ、朝書くって言うたか。5時から書いて、ジョギングするとか」
湊さん「へぇー」
晴一「ジョギングしたりとか、スタバで書くとか、いろんな人のスタイルがあるんですね」
湊さん「うん、もう私はジョギングとかしなくって、でもなぜか万歩計をつけていたことがあって、その万歩計は動き始めて7秒経ったらカウントし始めて、家の中の移動なんて7秒あったらできるから、」
晴一「あはは(笑)」
湊さん「1度見たときに、27歩とか」
晴一「あははは(笑)」
湊さん「今日27歩かぁ。万とか、単位が違う…(笑)」
晴一「指で数えれるじゃんそれもう(笑)」
湊さん「すごーい、7秒以上動いたのが27歩分かぁって(笑)」
晴一「それぐらい書くときはずっと書いてるってことですね」
湊さん「そうですねぇ」
晴一「はい、それでは1曲挟みますね。『ネオメロドラマティック』聴いてください」


ネオメロドラマティック


本日のゲスト・湊かなえさんにちょっと質問

晴一「この(ラジオの)時間は執筆の時間ってことですよね。このラジオが流れてる時間はだいたい」
湊さん「そうですね、11時はもう、そろそろ一筆書かなきゃなぁって感じです」
晴一「お酒は?飲まれる?」
湊さん「お酒は、飲むの好きなんですけど、でも夜書くので、晩ご飯の時ももう飲まないようにしていて…平日はもう飲まないようにして、土日に飲んだり…あと原稿が一区切りついたら飲むようにしてるんで、家族ももう私が飲んでたら『あ、一区切りついたみたーい』っていう感じで…」
晴一「その毎日書くやつの、終わったあと4時ぐらいに飲んだりはしないんですか」
湊さん「あもう、すぐ寝ます。すぐ寝ます」
晴一「あ、なるほどね。それは家庭のあれがありますからね」
湊さん「うん」
晴一「そっか夜かぁ。俺もねぇ、ここ何年か書くって…昼に書くんは書くんで頭がクリアで、いいなぁって思ってるんですけど、やっぱ夜書くんも、もう1回やってみようかなぁ…
あのラブレター理論ってね、ひとつ作品を作る上では悪くないゾーンですよね、頭の中の」
湊さん「うん、なんかもう世界中に自分しかいないみたいな感覚になって、ずうっと入り込めるんで…」
晴一「今度また試してみよう。昔はもちろん、夜中までやってたんですけど…夜中からやってたいうぐらいの感じかな?」
湊さん「宅急便も来ないし…」
晴一「確かに(笑) Amazonでーすって来ないし。また、ちょっとこれ今度は高校の文芸部の方ですね」
湊さん「はい」
晴一「・文芸部に入っています。4月に入ったので、半年しか経っていませんが、まだ1回も書き上げていません
湊さん「はい」
晴一「入部した時に、3年生から『書き上げるのに一番大切なことは書くことです』と言われたのを覚えていますが、確かにそうで、書いている途中で止まってます。書き上げたい気持ちはあるんですけど文化祭までに間に合わない。だいたい50ページくらいで足踏みです。
湊さん、私に小説を書き上げるための何かを授けてください

湊さん「あのー、ノルマを決める。今日1枚書くぞ、3枚書くぞって決めたら、あー今日ちょっとしんどいから休もうって思ったら明日もしんどいので、もう、それが書き終わるまでは寝ない。
だから、改行ばっかりになって、もう『はい』とか『いいえ』の会話のやりとりばっかりになって、あー明日これ全部消すことになるなーと思っても、とにかく、なんか書く。そしたらこれ案外いけるかも?っていうのが、手を動かしてたら出てくるんで、もう『はい』とか『いいえ』を繰り返して、あ~『。』がちょうど下に来ちゃったよ!とか」

晴一「ふふふふ(笑)」
湊さん「『しかし』とか入れてみようかとか(笑)、そんなの思いながらも、とにかく決まった数だけ、ノルマを決める」
晴一「なるほどね。いきなり…彼女で言うと、原稿用紙50ページを見ると、もうちょっと足踏みしちゃうけど、1日1ページでも2ページでも、しっかりやっていく。のが、結局は長編小説を書けるようになるってことですね」
湊さん「そうです。あと私いつも書く時ガム噛んでて…もうガムは必需品なんですけど、ガムって噛んでたら脳の近くの骨が動くから脳が活性化するって言われていて、本当にながらって全然もうできなかったんですけども、ガム噛みながら書いたら本当に進む進むって感じで、で今度はノルマを課した時にとにかくガムを口に入れて、ガム噛んでる間はとにかく書き続ける」
晴一「そっか自分にもちょっとこう、暗示でもプレッシャーでもなんかやらないと。だってその長編小説書き下ろしで…あれ何ページあるんだろ?500ページとか、600ページとか、ちょっと単位がわかんないけど」
湊さん「うんうんうん」
晴一「それが、まず湊さんの中で自分の頭の中でバーンとストーリーができるわけでしょ」
湊さん「うんうん」
晴一「それが結構な原稿用紙の枚数だって自分でもわかるわけじゃないですか。その1枚目を書き出すって結構勇気…果てしない道のりだから」
湊さん「1枚目と、その日の1行目がやっぱり1番しんどいかなーと思って。だいたい5行ぐらい書いたらリズムに乗ってこれるので、あー今日出てこない出てこないって思っても、あーガム口入れましたーはいはい書いてよーって自分にこう…」
晴一「なるほどね!」
湊さん「発破をかける」
晴一「湊さんでもそうすんだから、このメール主さんも、もうええんよってことよね。いきなりこの文芸部に入って、いきなり50ページで超名作みたいなものが書けなくてもええけえ、まず書き上げてみる」
湊さん「そうです、そうです。もうあの日記でもいいんですよ今日1日やったことみたいな、それをとにかくもう最後まで書き上げたら、物語を最後まで、ね、書くペースとかがわかってくるし、達成感も」
晴一「結局は書けっていうことよ、ほんまに」
湊さん「そうです!」
晴一「四の五の言わず書けと」
湊さん「それか家族に閉じ込めてもらうとかね、なんか」
晴一「あっははははは(笑)」
今浪さん「はっはっはっはっはっ!(笑)」
晴一「あの、寒い日のベランダに出してもらうとかね(笑)」
湊さん「書けない書けない(笑) ダメダメダメ(笑)」
晴一「はい、もう1個じゃあ…どっちにしようかなぁ。はい。
・島を出て生きていこうという意識が芽生えたのは何歳の頃だったのか聞かせてください。
私は今大分の田舎町で暮らしています。地元の大分県佐伯市は好きですが、高校卒業したら進学でも就職でもいいから出ようと思っています。好きだけど離れようと思っているのはなんでかっていう気持ちが最近大きくなってきて、進路を慎重に考えています。地元を出た時ってどんな感じでしたか。覚えてたら教えてください

湊さん「えーと私あの、因北中学校って…中庄って、結構尾道寄り、北なんで、進学も尾道の高校行く子が何人かいて」
晴一「尾道北と、東か」
湊さん「そうそう尾北と尾東があって。でそこを私も受けたかったけど、親がもうダメダメって。高校は因島までって言われて。本当に、ダメって言われたらすごい出たくなって…なんで、ねぇ、島内じゃないといけないんだろうとか、そんな風に思ってたんで、高校尾道行ったらダメって言われた時から、もうずっと島を出ていくことを考えて…で高校卒業したら出るぞ、出るぞ、って思ってて。
であの、大学は関西までだったら出してやるって親からも許可はもらえたんで、じゃあ出してもらうからにはちゃんと勉強しようと思って、出て行ったんですけど、なんか、ねぇ。出たぞ!っていう開放感はありましたねぇ。
なんだろう、別に島が窮屈だったわけじゃないけれど、すごい可能性が広がったっていうか。
一番びっくりしたのが、私、関西の大学に行って、甲子園球場のすごい近くに住んでいて…で今日阪神戦満員で、5万人の人が球場に詰めかけてますって言ってた時に、もう島の人口の、もうね!」

晴一「3万なんぼだから、これ全部入っとんか」
今浪さん「(笑)」
湊さん「そう、島の全員が入っても、まだ空席出来てんのかぁって。もう単位が違うじゃんって」
晴一「死にそうなばあちゃんじいちゃんから、生まれたばっかりの子どもまで座らせて、甲子園がいっぱいにならない」
今浪さん「(笑)」
湊さん「そう!大都会土生からバス出したって…」
晴一「ダメダメダメ(笑)」
湊さん「ダメダメ、埋まらない(笑)」
晴一「人の多さはね、この彼女の佐伯市ってどれぐらいの田舎かわからんけど、まぁ因島、おしなべて田舎だから、関西に行った時に…僕らも関西が最初だったんですけど、やっぱインパクトはありましたよねやっぱりねぇ」
湊さん「あと因島で1番高い建物って、もしかしたら高校の校舎の4階とかだったのかなぁって…」
晴一「かなぁ~」
湊さん「ニチイ?(笑)」
晴一「あのね、ニチイの近くの、土生港の近くに日立会館があって」
湊さん「日立会館?昔、映画館が入ってたとこ!」
晴一「うん、あったんですけど、そこが因島で唯一エレベーターがあったんじゃないかなと」
湊さん「あー!で、それでも5階か6階ぐらいで。それが大阪出て行った時に、阪急グランドビルかなんかで20何階かにレストラン街があって…20何階!?って」
晴一「いや土生港の…じゃないわ因島高校の何倍みたいなことになる」
湊さん「そう。なんか、もう単位が違いすぎる!って」
晴一「ですよね。で、そうなった時に、今回の『落日』もそうだけど…僕とか、僕の田舎もんの方向は、都会出たら都会みたいなもんを書きたいんです」
湊さん「あー…」
晴一「都会っぽいもの」
湊さん「うんうんうん」
晴一「都会で流行ってる音楽とか都会で流行ってる言葉とか。でも湊さんの作品って比較的こっちの…因島に近いとは言わないけど今回の笹塚町もそうだけど、」
湊さん「うん」
晴一「田舎の話も多いじゃないですか。そういう表現じゃなかったんですね?都会的な」
湊さん「そうですね。都会はもう東京在住の作家の方ってたくさんいるし…それよりは、島を出ていきたいと思ってたのに結局今淡路島に住んでて、親からも『あんたあんだけ因島出たい言うとったのに淡路島におるじゃん』って…(笑)」
晴一「島かいまだ…いう(笑)」
湊さん「で、でもそれは自分で選択して住むところと、生まれてくじ引きみたいにね、生まれ育ったところとまた違う感覚だし、そしたら今どっちの規模もわかるから。で都会って、結局いっぱい店はあるけど買うものってひとつじゃないですか」
晴一「確かに」
湊さん「そう言うと、なんかそこまで変わんないかなぁとかも思って。
じゃあ地方に住んでるからこそ書けるものを書いたら、あのね、今ご質問くださった…メール主さんとか、そういった都会に出ようかなーと思ってる人とかここの地方で頑張ろうかなーと思ってる人の、気持ちに寄り添えるものが書けるんじゃないかなーって」

晴一「うんうん」
湊さん「日本中いっぱいそういう人がいるんじゃないかなーと思って」
晴一「うーん。結局、(田舎から)出るけど、たぶんこのメール主さんも出るんじゃろうけど、1回くらい出た方がええと思うし。僕は、因島を捨てて出てきたみたいな気持ちでね、だからロッカーってそうだろうって思って出てきたんだけど、」
湊さん「あ、うん、うん」
晴一「結局いま因島よう帰りよるし、全然嫌いじゃないし、だから出たって別に田舎を捨てるわけじゃないけえ。実際捨てれんし」
湊さん「うんうん」
晴一「だからそんなにあんまり難しいこと考えずに、故郷は故郷、今住んでるとこは今住んでるとこ、っていう関係でね、いいんじゃないかと」
湊さん「うん。出たら、いいところに気づく。住んでる時は嫌なとこばっかり…ね。
ライブ行ってもアンコール聴かずに帰らないと、船やらバスに間に合わん~とか(笑)」

晴一「XジャンプができないXのライブってどんなライブよ!?アンコールで!」
今浪さん「あっはっはっはっは!(笑)」
湊さん「あははは(笑)」
晴一「広島まで行ったらね、帰らんといけん(笑)」
湊さん「『すみませんすみません』って(笑)」
晴一「それがねぇ…今は別に、故郷はやっぱり、故郷でしかないなと思うぐらい、好きですけど」
湊さん「うんうん」
晴一「はいここで1曲です、『ハネウマライダー』聴いてください」


ハネウマライダー


晴一「先週、今週と小説家・湊かなえさんにお付き合いいただきながらお送りしてきました。ありがとうございました!いかがでしたか」
湊さん「ありがとうございましたー。なんかあのー、もっと早く、こういうなんか因島の話ができる時がもっと早く来るんじゃないかなと思ってたら、」
晴一「僕も思ってました」
湊さん「思いがけずデビューから10年経って、こうやって因島の話ができたり、小説の話ができたり、もう本当にお兄さんの話ができたり…(笑)」
晴一「うちの兄ちゃんの話(笑)」
湊さん「新藤くんちの屋根の色の確認とかしたりとか(笑)、本当に楽しかったですー。また呼んでください」
晴一「もし昭仁がいたら、もっと中庄のマニアな話もできるわけでしょ」
湊さん「もうね、あのー、『土生は都会じゃ思うて…』って(笑)」
晴一「あはははは(笑)」
湊さん「あーもうね、因島弁全開だったかもね(笑)」
晴一「これ、湊さんちょっとこの、なんかニュアンスがあるでしょう。これが因島弁じゃけ」
湊さん「うん」
晴一「なんか、広島弁とはまたちょっと違う、ね」
湊さん「そう、もう東側のね。あと愛媛とも近い因島弁独特のね。
でも因島に住んでる時ってあんまり方言ないって、わりと標準語って思いよった…(笑)」

晴一「思いよったが(笑)、都会に出てきたらめっちゃあることに気づいた」
湊さん「うん、私ほんとに恥ずかしいのが、小学校ん時に、日記かなんかの宿題で方言について書く時に、『因島にはあんまり方言がないので面白くないなと思います』って(笑)」
晴一「あっはははは(笑)」
湊さん「先生が赤ペンで『ほんとにそうかな?』って書かれて…(笑)」
晴一「そうなんですよねぇ…」
湊さん「恐ろしい恐ろしい(笑)」
晴一「意外にあるで。湊さんのイントネーション含めてね、もちろん当代一のベストセラー作家の、知識としてはあるけど、やっぱね、因島の親戚のお姉ちゃんみたいな感じがやっぱどっか自分ん中で抜けずに…」
湊さん「あー、うんうん」
晴一「なんかすごい不思議な感覚で先週今週とやってきたんですけれども。ちなみに今後のスケジュールみたいなことあります?」
湊さん「えーっと、新刊が出るのはもう、年内はこの『落日』が最後で、来年出るのが今度は美容をテーマにした…」
晴一「美容をテーマに…美しいやつですね?」
湊さん「そうです。美容整形とかの美容をテーマにした作品なんで、それもよかったら読んでほしいなあと思います」
晴一「これちなみに、湊さんの頭ん中に、作品の構想?種みたいなのも含めてどれぐらいあるんですか」
湊さん「まったくなくって…」
晴一「ない?」
湊さん「ない。ネタ帳もないですし…ただ、書く時に、担当編集の人から、なんか『一声ください』みたいな感じで言う事が多くって。で『落日』も、『映画どうですか』って言われて…そしたらこれ角川春樹事務所から出てるんですけど、角川春樹社長が『裁判』って言葉も投げてくれて、あーじゃあ映画と裁判と、両方合わさったものからスタートしてみようと思って…」
晴一「えっそっから考えるん?」
湊さん「そうです!なので、次の『美容』も、担当編集の人が『美容』ってどうですかーって言われて、あーなんか美容ってまったく興味ないなー、でも今美容整形受ける人多いしなー、そもそもなんで自分が美容に興味ないんかなーって。まぁ旦那がいて、綺麗になったってどうしようもないしなーと思いながらもね、結婚しても綺麗な人がいるし、っていうことで書きました」
晴一「はぁ…それもまた面白い!2つ、3つか4つテーマトークみたいな、2つ言われたら1冊長編が書けるいうのも、すごいっすねぇ(笑)」
湊さん「曲とか作る時に、何から入るのかなぁって、そういうのも伺えたらよかったなぁ…ふふふすいません(笑)」
晴一「はい、ぜひまた次回、色々話しできたらなと思いますけれども。えーっと美容に関する…『美容』って題じゃないですもんね?」
湊さん「そうです。タイトルはね、カタカナで『カケラ』っていう」
晴一「『カケラ』。美容整形とかに関する…」
湊さん「そうです」
晴一「小説が来年出ます。ぜひそっちの方も手に取ってみてはいかがでしょうか?
はい、またぜひラジオも来ていただきたいですし…岡野くんもうち、昭仁くんももうひとり因島なんで」
湊さん「うん」
晴一「ぜひまた、ポルノグラフィティとしても湊かなえ先生にお会いできたらなと、思います!」
湊さん「はい!」
晴一「では今週も締めに湊さんから1曲、リクエストいただきたいなと思います!」
湊さん「東京で聴きたかったよ~『ジョバイロ』!」
晴一「両日やりませんでした~(笑)」
湊さん「あははは(笑)」
今浪さん「(笑)」
晴一「『ジョバイロ』聴いてください!本日のゲストは小説家の湊かなえさんでした!ありがとうございました!」
湊さん「ありがとうございましたー」


ジョバイロ


エンディング

・12月25日 20th Anniversary Special Live Box発売
・出張ポルノ展 次は大阪・心斎橋HMVミュージアムにて開催
広島テレビ『テレビ派』にて「ハルイチノオト」担当


はい、今週まで湊さんにお付き合いいただきましたけれども…
あの、湊さんから時々出る因島弁のニュアンスがほんとに、親戚のお姉さん、おばちゃんが喋る喋り方ですごいね、独特の安心感があるんだよね。
今浪さん「ふふふふ(笑)」
わかる?俺の喋り方またちょっと違うじゃん、あれ女の人の因島弁なんだろうねきっと。俺も真似できんもん。
確かに『告白』が出た時に…10年前っておっしゃってたな。そん時にまぁ、因島の人なんだってーって話になって。まぁこういうラジオもやってるしそのうちたぶん、お会いする機会あるだろうなーって思ってたら、こんなにしっかり会えたのがこのタイミングになるとは、思ってもいなかったんですけども。
ま、こうやって今夜と先週、しっかり話せてすごく楽しかったです。まだいっぱい聞きたい話があるんでね、ぜひこういう機会を作れたらなと思います。


ぜひ、書店で、探さなくても見つかると思うんで…『落日』、手に取ってみたらいかがでしょうか。




ディレクター谷脇さんの放送後記

10月14日の放送

晴一の先輩であり
お兄ちゃんと同級生
しかも兄嫁のことも
知ってる、
ベストセラー作家
湊かなえさんを
2週にわたって
ゲストに迎えてお送りしました。

女性の柔らかな因島弁って
こんな感じなんだと
笑顔になりつつ、
そして、
次回作の話もしてくれたり
作家としての頭の中を
少し覗かせてもらえました。
嬉しい2週間でしたね!

因島聖地巡礼
場所も増えたんでは?